2月14日の聖戦

2月13日(月)

小料理屋ふみ

本日の営業が終了し、のれんも降りているのにふみの明かりはまだ消えていなかった。

そして、遠峯りりすはまだ起きていた。

その理由は明日にある。

「よしっ、完成」

普段のふみに漂う事のない匂いが、ふみに漂う。

甘いチョコレートの香り。

そう、明日は2月14日バレンタインデーである。

「あとは、明日これを志雄に渡せば」

その時だった。

「あら、りりす。まだ起きていたのかい?」

「おばあちゃん」

さっきまで録画した韓ドラを見ていた小料理屋ふみの女将、遠峰フミコが、顔を出したのだ。

「まだ、お店の方の明かりがついていたから何かと思ったら」

と、さっき誕生したチョコレートへ、視線を落とす。

「あ、あ、あのねこれはねっ」

急にりりすは慌て始める。

何故なら、ふみこが韓ドラを見ている間にこっそりと作ろうとしたからだ。

「ふふ、志雄ちゃんにでしょ?」

「うん、そうなんだけど...」

「今年こそ、本命として渡すんでしょ?」

りりすはこれまで気恥ずかしさで「ぎ、義理チョコよ!?義理よ!分かった!?」と、手作りチョコレートを義理チョコと言って渡して
いたのだ。

「大丈夫よ。自信を持ちなさい」

「うん、頑張るわ!」

一人の小柄な少女が決意を改めた数時間前。

北的射にも、チョコレートを作っている少女が居た。

「でーきた♪後はこれを、ラッピングしてっと…」

「準備完了っ、後は明日志雄君に渡すだけ…」

今作ったチョコレートを凝視する智紗。

「志雄君…喜んでくれるかな?」

分量も間違えていないし、味見もしたから大丈夫だと思うんだけど、でも、志雄君の口に合わなかったらどうしよう…


別の場所でも。塚本志雄のためにお菓子を作っている少女がいた。

「ふふふ♪できたわ」

澄空学園の元生徒会長、嘉神川クロエである。

「これを明日、志雄に渡して…ふふ」

クロエが作っている物は他の少女と違い、作っているのはチョコレートではなくチョコレートケーキだ。

しかも、カカオやや多めのほろ苦いチョコケーキである。

そして、唐突にシミュレーションもといクロエの妄想が始まる。

澄空学園生徒会室

「志雄」

「あっ、クロエ先輩」

「お疲れのようね」

「ええ、チェックする書類が多くて参ってますよ…」

「そんな生徒会長さんに甘い物のプレゼントよ」

「ありがとうございます」

「あっ、ケーキなんですね」

「ええ、ケーキなら・・・はい、志雄」

「ええっ!?クロエ先輩!?」

「はい、あーん」

「あっ、あ〜・・・」



「おねぇちゃん、おねえちゃん?」

「きゃあっ!ノ、ノエルっ、いつからそこに?」

キッチンの入り口には、心配そうにクロエを見つめるノエルの姿があった。

「えーとね、『そんなせーとかいちょーさん』のあたりから」

クロエの顔が熟したリンゴのように赤くなる。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

「だ、大丈夫よっ」

「あら、ノエル、どうしたの?」

リビングに現れたのは、嘉神川エリーズ
クロエとノエルの母親である。

エリーズがキッチンに置いてあるチョコレートケーキを視線を落とし言う。

「あら?チョコレートケーキね、明日、友達の誕生日なの?」

「ううん、明日はバレンタインデーだから・・・」

すると、エリーズは首をかしげる

「バレンタインデーだから?」

そして、思い出したかのように

「ああ、日本のバレンタインデーは、女性が男性にチョコレートをあげる日だったわね」

資料によると、フランスのバレンタインデーは主に夫婦同士の記念日であり、プレゼントは男性から送る様で、日本のように女性が意中の男性にチョコレートを渡す日ではないようだ。

「それで、クロエは誰に渡すのかしら?」

「えっ?あ、それは・・・」

口ごもる。

恥ずかしくて、志雄にあげると言えないのだ。

そんなクロエの代わりにノエルが元気よく言う。

「志雄お兄ちゃんだよー!ねっ?」

「えっ!?あ・・・ええ」

その答えにクロエは、面食らった。

それに対してエリーズは。

「ノエル・・・どうして、お姉ちゃんがチョコレートを渡す相手がわかったのかしら?」

「だって、さっきね、お姉ちゃんが『志雄、あ〜ん』って、キッチンでやっていたからっ!」

その答えに再びクロエの顔が赤くなる。

「もぅ!ノエル〜!!」

そして、2月14日バレンタインデー

塚本志雄は、いつも通りふみへ向かう。

朝に弱い幼なじみを起こしに行くためだ

「おい、りりす。おき・・・」

「あっ、志雄。お、おはよ」

いつも、夢の中にいるはずの幼なじみは着替えをすませていた。

「起きていたのか」

「たまたま、目が覚めちゃったのよ」

「いつも、こうだと助かるのだが…ぐぇっ」

志雄にローキックが直撃する

「うっさいわね!たまたまって、言ってるでしょ!」

「すっかり油断していた・・・」

「あっ、そ、そうそう、こ・・・」

思い出したかのように、りりすはきれいにラッピングされたチョコレートを志雄に渡そうとする



しかし

「しまった!今日、俺が日直だった!」

「え?」

「じ、時間がないっ!ほら、りりす。早く学校に行かないと、遅刻するぞ!」

「え?ちょっと!志雄!」

残念、もうちょっとのところで、チョコを渡すこと叶わず。

そして、澄空学園

「りりすちゃ〜ん!おはよう!」

「おはよう、佐賀君」

「りりすちゃん!」

亨はりりすへ両手を突き出す。

「な、なに?」

「チョコをください!」

少々の沈黙を挟み、りりすは申し訳なさそうに言った。

「あ〜、ごめんね、佐賀君の分忘れてた・・・」

「ぐはぁ?!りりすちゃんっそれはあんまりだ・・・」

教室の後ろの方で、佐賀亨が世界の終わりだと言わんばかりに落ち込む

「佐賀君?お〜い」

「こりゃあ、先生来るまで、直らないな・・・」

「うぅ・・・りりすちゃぁん」

「悪いコトしちゃったわね・・・」

そして、時間は昼休み

教室にて

よしっ!朝渡せなかったから今度こそ!

「志雄!」

「ん?なんだ?」

「あ、あの、こ・・・」

ピンポンパンポーン♪

「えー、塚本志雄君、塚本志雄君、至急、生徒会室へお越しください」

ピンポンパンポーン♪

「すまんっ、りりす。俺、生徒会室に行ってくる。また後でな」

「あっ、ちょっと、待ちなさいよ!」

りりすの叫びもむなしく、志雄は教室から出て行ってしまった。

生徒会室に到着し、扉を開ける

生徒会室には、今の澄空学園にいるはずのない人が生徒会長のいすに座っていた。

「く、クロエ先輩?」

生徒会長のいすに座っていたのは、かつての生徒会長

嘉神川クロエ

志雄のあこがれの先輩である。

「遅いわよ、塚本」

「いったい、どうしてココに?」

正直な話、志雄はどうしてここに、クロエ先輩がいるのか、フシギだった。

「大学はもう春休み、それにバイトも今日は夕方からだから
塚本に、バレンタインチョコを渡そうと思って来たのよ」

ほおを赤らめ、クロエは言う

「あ、ありがとうございます」

クロエは時計を一瞥し、志雄に向き直る

「昼休み、まだ、でしょ?だから、食べさせてあげようと思って・・・はい」

クロエは持ってきたケーキを箱から出し、他の役員が使う長机の上に置く

そして、ナイフでカットし、フォークにケーキをのせ、志雄の口に近づける。

「ええっ?!いいですよ」

「遠慮しないで、塚本。ほら」

「でも・・・」

「いいの、それとも、いやだったかしら?」

「いいえ!そんなことは!」

「ふふっ、良かったわ」

「それじゃあ、はい、あ〜・・・」

後数センチのところで、志雄はケーキを食べ損ねる

何者かが、生徒会室の扉を思い切り開けたからである。

「志雄先輩!やっぱり、ココに・・・え!」

生徒会室に入ってきたのは、志雄の頼れる後輩

春日結乃

彼女もまた、志雄にチョコレートを渡すべく朝から、チャンスを狙っていた一人だ

そして、生徒会室にクロエ先輩がいる事実に驚愕している。

「く、クロエ先輩!?どうしてココに!?それに、校内で何やっているんですか!!」

「ええと、春日さん、コレは・・・」

「こ、校内で!しかも、生徒会室で何やっているんですか!志雄先輩も!」

「ゆ、結乃・・・こ、これは・・・」

「と、とりあえず、志雄先輩から離れてください!クロエ先輩!」

そういうと、クロエの眉間にしわが寄る

「それだけは、譲れないわ」

「離れてください!」

「いやよ」

二人の間で火花が散る

「あ、あの、二人とも、落ち着いて・・・」

「志雄(先輩)は、黙っていて(ください)!!」

「はい・・・」

二人のケンカを仲裁しようとするがあっという間に、二人に押しで負けてしまった。

「うぅぅぅ・・・」

「むむむむむ・・・」

にらんだまま、二人は動かない
志雄は見ていることしかできない。

にらみ合うこと、20分たった頃

昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

志雄はこれほど、学校のチャイムに感謝したことは無いだろう。

「授業があるので、失礼します!」

結乃が力任せに、扉を閉め、その音が生徒会室に響く。

「つ、塚本も、授業でしょ?」

「あっ、はい、行ってきます・・・」

志雄が出て行き、静まりかえった生徒会室でクロエは、ため息をついた。

そして、放課後

志雄は公園に向かっていた。

その理由は、智紗にメールで呼び出されたからだ

箱崎智紗。
志雄に惚れて告白したものの結局、とある理由で志雄との交際をあきらめなければ、ならなかった娘
今では、友達として良好な関係をはぐくんでいる。

「箱崎さん、何の用だろう?」

メールには、「公園で待っています」と書いてあっただけで、他には何も書かれていなかった
メールなので、テガミの時のように名前を書き忘れることはない。

結局、答えは見つからず、公園に着いてしまった。

智紗はあのときと同じ公園の奥、噴水の近くで待っていた。

「お待たせ、待った?」

「ううん、今来たところだよ」

「それで、用事って?」

「え〜とね、ハイ、志雄君」

すっと、志雄の前に可愛いラッピングされた箱が差し出される。

「バレンタインチョコだよ」

「ありがとう、箱崎さん」

「家に帰ってから、食べるよ」

「おいしくなかったら、ごめんね?」

「そんなことないさ、箱崎さんの作ったチョコだもの」

智紗の顔が、ぼっと、赤くなる

「あ、ありがとう・・・」

それから、志雄は智紗と世間話をして、学校へ戻った。

志雄が智紗に呼び出されて公園に向かっているその頃、教室。

「くぅ〜!せっかく、作ったのに志雄の奴!何でこうも、渡すチャンスがないのよ!」

志雄のバカ!志雄のバカ!志雄のバカ!志雄のバカ!

志雄のくせに、生意気なのよ!

他の女の子からもらって、鼻の下伸ばしちゃって!!

私からはいらないって事なのかしら・・・そんなこと無いわよね?

「ダメダメ!弱気になっちゃ!」

悪い考えを振り払うように頭を振ると、りりすは気合いを入れ直した

「さてと、生徒会室へと・・・ん?」

生徒会室に向かおうとした志雄の前に、見覚えのある容姿を見つける

「おぅ、りりす。まだ、帰って・・・」

志雄はりりすの不穏な気配を感じ取る

「こ、この気配はっ・・・?」

大の男でも泣き出しそうなオーラがりりすを取り巻いている。

俺・・・何、りりすを、ここまで、怒らせるようなコトしたか・・・?

全く、身に覚えがない

志雄の記憶にないのは当たり前である。

なぜなら、りりすはチョコを渡すのは放課後が最後だと決め
死ぬ覚悟にで志雄の目の前に現れたからである。

段々、りりすが志雄に近づいてくる。

「し〜お〜?いい?そこから動くんじゃないわよ?」

ど、どういうことだ!と、志雄は身に覚えのない行為に恐怖している

ほんとに何もしていないよな?俺!っと、今朝から今までの行動を振り返る

うん、してない…多分。

何とも、頼りがない。

一歩、また一歩、りりすが近づいてくる。

そして、志雄の恐怖も最高潮に・・・!

「りりす!ごめん!」

きびすを返し、志雄は廊下を走り出す。

生きるために

「あっ、ちょっと!!志雄!!待ちなさーい!!」

誰が待つか!

とにかくに、逃げないと!

捕まったら、殺される!

志雄はがむしゃらに校舎を走る。

生徒会長が廊下を走るなどあってはならないことだが、後ろから迫る脅威に逃れるには、走るしかないのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

数分走ると、息が上がる。

ここで、日々の運動不足を痛感する。

しかし

「し〜お〜、待ちなさーい!」

「やばっ、来た!」

志雄は走った。己の命のために

志雄は走った。未来のために

志雄は走った。迎えたい明日のために

志雄は走った。後ろから迫る幼なじみから逃れるために

そして、りりすを撒くことに成功した。

隙を見て、図書室に逃げ込んだのだ。

「これで、ひとまず安心だ」

そう、つぶやいたときだった

「誰か、いるの?」

その声に志雄は驚く

そして、声の主は姿を見せた

「クロエ先輩・・・」

「あら、塚本。どうしたの?疲れているみたいだけど」

「ちょっと、理由がありまして・・・」

「とりあえず、深呼吸しましょう。はい、吸ってぇ、吐いて、また、吸ってぇ、吐いて」

クロエの声に会わせて深呼吸をする

そうして、落ち着いた頃

「クロエ先輩、ありがとうございます」

「どういたしまして」

「それで、理由ってなにかした?」

「えっ」

「あっ、ごめんなさい」

「いえ、今、ちょっと。りりすに追いかけ回されているんです」

「遠峯さんに?」

「はい」

「どうして?」

「それがわかれば、苦労しませんよ」

「う〜ん」

「う〜ん」

二人して、悩みこむ

そうしているときだ

「あっ、クロエ先輩、その箱は」

志雄がチョコレートケーキが入った箱に気がついたのだ。

「ああ、これね。さっきは春日さんが来て、食べて損ねてしまった所だったわね」

「ええ」

「食べたい?」

クロエは少し意地悪な顔で聞く

「はい」

「本当に?」

「本当です」

「よろしい、じゃあ、ちょっと待ってね」

箱からケーキを取り出す

そして、さっき、カットしたピースをお皿にのせて、志雄に渡す。

「はい、どうぞ」

「いただきます」

フォークが口に後数センチのところでまたもや、志雄はケーキを食べ損ねた

「見つけたわよ!って、ああ!」

「げっ」

りりすに、見つかった

しかも、状況はさっきよりも最悪

「私のチョコは、受け取れなくて、クロエ先輩のは受けとるんだ?ふぅ〜ん?」

りりすの爆弾に火がつく

「し〜お〜?」

りりすの声色には、はっきりと怒気が混じっていた。

本能的に危険を察知した志雄は、逃げようとするが

「まって、志雄」

「クロエ先輩?!」

クロエが志雄の制服の端をつかんで離さないのだ

「せめて、感想だけでも」

「いや、今はそれどころじゃっ・・・」

さっきとは、比べものにならないくらいの殺気を後ろから感じる

ガデラーザの体長とGN-X IVの体長ぐらいに

「すいません!クロエ先輩!」

制服の裾を握っていたクロエの手をふりほどく

そして、反対方向の扉から逃げ出す

「待ちなさーい!!!!!」

「ひぃ?!」

追いかけてくるのはりりすだけでは、無かった

「塚本!」

「クロエ先輩まで?!」

そう、りりすに加えて、クロエまで追いかけてきたのだ。

「うわぁぁ!!」

二人に追いかけられて再び、校舎を走り回る

追いかけられている内にいつの間にか結乃も加わり

志雄は屋上に追い詰められた。

普段なら、澄空の景色を一望できる絶好のスポットであるが今は巨大なオリに他ならない

唯一の出口をふさがれ、端には高いフェンスがそびえ立つ

「ぅうぅ・・・ああ・・・」

目の前には目の色を変えた美少女三人が。

「し〜お〜?」

「塚本?」

「志雄先輩?」

じりじりと、志雄に迫ってくる

「ひ・・・」

そのときだった

「とぅ!」

屋上の給水タンクから、降り立つ

一つの影

その名も

「佐賀亨・・・親友のピん・・・」

「邪魔!」

「どいて!」

「邪魔です!」

亨、轟沈

「亨!おまえ、いったい何のために!!」

「志雄?」

「ひぃ?!」

「塚本?」

「ひゃあ?!」

「志雄先輩」

「おぅ?!」

「「「私のチョコを食べてください!!」」」

「むぐぅ?!」

三人からチョコを口に押し込まれる

こんな状態では味も何もわからない

3人は志雄の状態を確認せず、志雄の口にチョコレートを押し込む

「むぐぅ?!んんん!!」

「むぐぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!」

志雄の断末魔は、澄空の空に溶けて消えて去った・・・

数時間後、あしかじま

とあるアパート

ピンポーン

芹沢直樹の家のインターホンが鳴る

「はーい」

直樹が扉を開けるとそこには、ぼろぼろになった亨がいた。

「亨さん?!どうしたんですか?!」

「なおきぃぃぃぃぃい」

直樹の顔を確認すると亨は、泣きついてきた

「バレンタインデーなんて、こりごりだ!もうあんな思いはしたくねぇんだよぉぉぉ!」

「ちょっと、亨さん、落ち着いてください!!」

そういって、直樹は亨を引きはがす。

「いったい何があったんですか」

「それはだな、かくかくしかじか」

「なるほど、それは大変だったんですね」

「ああ、もう、バレンタインデーなんて、こりごりだ・・・」

そういって、ふと、亨が視線を何気なく台所に机に移したときだった

「あっ・・・直樹・・・おまえ・・・」

「あっ、いや、これは」

傷心の亨の心にガツンと来る物質、バレンタインデーのチョコレート

「うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「と、亨さん?!」

直樹のアパートを飛び出し、佐賀亨はありたっけの力を込めて、叫ぶ

「バレンタインデーなんて・・・バレンタインデーなんて・・・」

「バレンタインデーなんて、無くなってしまええええええええええええええええええええええええ!!!」



これは、一つの挿話である。

場所は澄空、小料理屋「ふみ」

現在、ふみにはとある小説家とフリーターで店長代理まで上り詰めた男が客としていた。

「で?今日、バレンタインデーだったけど、鈴ねぇはチョコを誰かに渡したのか?」

「わ、渡したさ」

「誰によ?塚本君にか?」

「ああ」

「嘘だな」

「なっ!何で、そんなことが!」

「だってな、塚本君、学校でチョコレートの食い過ぎによる出血多量で、病院に運ばれたって話だぜ?」

その話が聞いたりりすの肩ビクリっと震える。

「鈴ねぇ、澄空学園に、行ってないだろ?」

「・・・」

「いつ、渡したんだよ?」

「あー!もう!嘘だよ!渡してないよ!!」

そういって、ポケットにしまっていたチョコレートを取り出し

「食らえ!」

「痛っ?!」

信の顔面めがけて、投げつけた。
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